遺言は,被相続人の最後の意思を尊重するための制度です。
民法は,15歳に達した者は,遺言をすることができると規定しています。
そのため,未成年者であっても,15歳に達していれば,親権者などの法定代理人の同意を得ることなく,一人で(単独で)遺言をすることができます。
被相続人は遺言をしておけば(遺言書を作成しておけば),自分の全財産を相続人の一人に帰属させることもでき,あるいは相続人以外の第三者に帰属させることもできます。
ただし,兄弟姉妹以外の相続人,つまり,配偶者,子,直系尊属は,相続財産の一定割合を取り戻すことができます。
これを遺留分といいます。
遺留分の割合は,直系尊属だけが相続人の場合は3分の1,それ以外の場合には2分の1です。
民法は遺言について一定の方式を定めており,この方式に反する遺言は効力を生じません。
民法は,①自筆証書遺言,②公正証書遺言,③秘密証書遺言,④死亡の危急に迫った者の遺言,⑤伝染病隔離者の遺言,⑥在船者の遺言,⑦船舶遭難者の遺言を規定しています。
このうち,一般的なものは①自筆証書遺言と,②公正証書遺言です。
自筆証書遺言は,遺言者が,その全文,日付および氏名を自書し,印を押すことによって(これだけで)成立します。
印は,実印に限らず,認め印でも拇印でもかまいません。
このように,費用もかからずに手軽に作成することができる遺言です。
ただし,“自書”しなければならないため,パソコンで作成することはできません。
自筆証書遺言は非常に簡易な方法で作成することができますが,方式に反したため効力が生じないことがある,偽造・変造のおそれがある,相続人に発見されないおそれがあるなどといわれています。
公正証書遺言は,公証人が証人2人以上の立会いのもとに作成する遺言です。
このように,公正証書遺言は公証人が作成するため,方式に反したために効力が生じないということはほとんど考えられず,原本が公証役場に保管されるため,偽造・変造のおそれもありません。
ただし,公証人に支払う手数料が必要となります。